こんぬづわー、元・盛岡市地域おこし協力隊きのぷーです(*> ᴗ •*)ゞ
今日は、北海道函館市にある北海道国際交流センター様を訪ねてきたお話です。
同センターを拠点に貿易振興に取り組む地域おこし協力隊員が活動を始めたと知り、函館市の取り組みについて話を伺いたく、隊員本人にご提案した結果、面談が実現しました(^∀^)ノ
早速行ってみましょう!
今回の面談には、函館市地域おこし協力隊の瀋朝陽(プーン・チャウ・イエング)隊員の他、受け入れ先のご担当者であられる北海道国際交流センター(以下・HIF)の池田誠専務理事、函館市からは経済部食産業振興課担当職員の方も同席下さいました
地域おこし協力隊採用の背景
函館市では定住人口の減少による地域経済圏の縮小と、製造業者の生産工程における長期的な人材不足が同時に進行し、市内の食関連事業者における従来の経営手法が立ち行かなくなる状況が懸念されています
一方で、海外において日本食ブームを背景とした関連市場の拡大や、諸外国と我が国との経済連携協定等の相次ぐ発効により、企業間における商品やサービスの国境を越えた供給体制の構築が進展し、その供給の担い手として市内の事業者を含む日本企業にも新たな商機が訪れています
そこで、HIFと連携し、熱意とアイデアをもって地域と協力して市内の事業者の輸出ビジネスの支援活動に取り組む新たな人材を活用し、本市貿易の振興を図ることを目的に地域おこし協力隊員を募集。その結果、今年8月にマレーシア出身の瀋隊員が採用されました
- マレーシア出身。酪農学園大学大学院修士課程修了後、静岡県内のITベンチャー企業に勤務
- 大学院時代にお世話なった教員から函館市が地域おこし協力隊を募集していると聞き、応募
- 英語、マレー語、中国語(北京語・広東語)、日本語の4ヶ国語が堪能
- 函館市として2人目の協力隊員。最初の隊員は函館物産協会で物産振興に取り組んでいる(地場産品の販路拡大,プロモーション活動等)
- 函館市職員ではなく、輸出ビジネス支援事業の委託先であるHIFの職員として採用。活動拠点もHIF
- HIFを介した採用にしたのは、隊員の待遇と活動のフットワークに配慮したかったから
- 瀋隊員の着任後は、日本人の心を理解するための研修から取り組んだ
輸出ビジネス支援事業について
- 初期段階での輸出に関する相談
- 初期ワンストップの電話応対
- 例:海外バイヤー等から外国語で地元企業への問い合わせが想定される際の応対について瀋隊員が仲介
- 地元企業の訪問活動を通じ、SNS等を活用した企業や商品に関するプロモーション活動を実施
- 外国人目線で商品・PR資料のアドヴァイス、英文の校正
- 英文の校正は基本的なレベルのものを各自で用意したものが対象(英検2級程度)
国際ビジネスセミナーの開催、多言語翻訳、通訳、最初からの翻訳作業(函館市の委託事業の一環として行われるものを除く)
2021年10月、瀋隊員にサポートを受けられた企業様の声を伺うことができました
函館市食産業振興課について
函館市食産業振興課は3年前(2017年)に開設された部署。食の産業化については工藤市長(当時)も力を入れて取り組んでいる
「貿易というカテゴリの中に食がある」のではなく、「食産業振興の一手段として「貿易」を位置づけた」
函館市での輸出ビジネスの課題について
函館の名前が海外で浸透していない
海外のバイヤーに、北海道は食べ物が美味しいと知られているが、函館の名前は海外で浸透していない。何の食べ物があるのか、まずはそこからの説明が必要であり、現地とのコネクションもないのが現状
これは驚いた。にわかに信じがたかったですが、知名度が「北海道>函館」ということのようです
実務がわかる人が近くにいない
実務がわかる人が近くにいない。特に食べ物の貿易実務の担い手がいない。
瀋隊員自身、貿易実務経験はなく、現時点でできることは初期段階のサポートと外国人目線のアドヴァイスに限られる
市外の事業者(ジェトロ北海道、一般社団法人北海道国際流通機構(海外輸出に挑戦する北海道内の企業をサポートする法人)、株式会社プライムストリーム北海道(音更町の貿易商社。ASEANを中心に道産食品を輸出)と連携した取り組みを検討
外国人目線のアドヴァイスがいただけるのは結構でかいと思う
ロシアとの貿易について
函館は古来ロシアを意識してきた町だが、同国の貿易障壁は高い。現状、現地に行ってバイヤーと会う見本市が中心だが、旅費は自己負担なため、参加できる事業者が少ない。
バイヤーに来てもらう招聘型の見本市を増やし、参加事業者も増やしていきたいとのこと
対ロシアに強い貿易会社や商社は道内にあるようです
今後の展開
- 瀋隊員が輸出ビジネス支援のコンテンツを新たに作り、仕掛けていく
- 例:商談会でプーンさんが通訳
- 企業訪問しながら顔つなぎしていく
- 現在製作中の食産業PR冊子を活用しながら地元事業者へ配布
質疑応答
食産業振興課の職員の方に、函館の輸出事情について、ズバリ直球質問!
取引相手国は?
ASEAN(タイが中心)とアメリカ西海岸
- アンテナショップ「どさんこプラザ」は海外に3店舗(バンコクに1店舗,シンガポールに2店舗)同店舗において3〜6ヶ月間、試験販売制度もあるとのこと
- 北海道の海外事務所は4カ国・地域にある
- ASEAN(シンガポール)、上海、ソウル(北東北三県・北海道ソウル事務所)、サハリン
食産業振興課が考えている未来のゴールは?
①「食べ物の街・函館」として日本国外の知名度を向上させたい
②地元で貿易会社を育てたい
③中長期的には人材育成も強化したい
ジェトロ北海道主催の輸出セミナー等の開催実績は?
函館でも不定期に開催してきたが、参加者増加等の反響はあまりない
…函館も厳しかったかー。大変だ
一次産品の輸出実績について
ほとんどない。市役所内でも農林水産部と経済部とで見解の相違があり、対応に苦慮している。全道の農業は十勝以外担い手不足に悩んでおり元気がない印象。函館市としては食加工品の輸出を想定している
函館商圏で輸出ビジネスに意欲的な事業者は
株式会社丸善納谷商店様(下記参照)の他、珍味を輸出している事業者もおられる(イカを神経締めしてシンガポールに空輸)
昆布及び昆布製品の製造・卸売を手掛ける企業様。2015年より英国向けに昆布製品の輸出を開始、成功
厳しい法規制がある中,ジェトロの「新輸出大国コンソーシアム」を活用しつつ「イギリス人個人が食べるもの」についてのルールがない点に着目。日本のJAS法を活用し、壁を乗り越えた。
函館市関係者との面会を振り返って
全国的な知名度を誇る函館市が、厳しさを増す地場産業(特に食産業)の振興を図るべく、輸出ビジネスの強化に取り組んでいること、また、その使命の担い手として、地域おこし協力隊員を採用していることを知りました。
外国人目線での商品開発のアドヴァイスができることや英文文書の作成サポートができる点は誠に心強い。多くの事業者様が同制度を活用して、輸出の裾野が広がることを期待します。
「地元で貿易会社を育てたい」との函館市の考えは、以前訪問したファーストインターナショナル社(八戸市)の創業の経緯に通ずるところがあり、岩手県内においても、そうした機運を作り、高めていけるかどうかが鍵となりそうです。
函館市の取り組みで学んだことを、岩手県における輸出ビジネス支援に活かして参りたい